イチゴ、葉物野菜栽培の1年間を振り返る(後編)
みなさんこんにちは
企画政策課の”しょうた”です。
本日のnoteは、先週に引き続き「新産業創造プロジェクト」開始からの1年間を振り返る記事をお届けします!
”後編”となる今回の内容は「イチゴ🍓編」です!
先週の「葉物野菜の栽培」についての記事はぜひこちらをご覧ください。
🤲 先週の記事はこちら 🤲
さて、今回は「イチゴ栽培」の内容、事業成果や課題などについて触れていきたいと思います。
(1)なぜ「イチゴ栽培」を選んだの?
まずは、「イチゴ栽培」を行うこととなった背景からお話ししたいと思います。
■新産業創造プロジェクトの立ち上げ
「新産業創造プロジェクト」が立ち上がるまでには、約5年という構想期間を経て実現に至りました。
プロジェクトの実現までには様々な困難もあり、検討・協議を積み重ねながら事業構成を組み立てました。最終的には「村独自の栽培システム」の確立を行うことを大きな目標の一つとして「施設園芸栽培調査研究事業」に取り組んでいます。
また、このシステムを売りにして、就農を考える「既に農業経験のある方」から「初めて農業を経験する方」まで、幅広く受け入れしたいと考えています。
そして、目指す村の新たな姿は
『漁業と酪農とイチゴのまち』
さるふつ
■まず、村の課題は何か?
私の記事「第1弾」でも触れましたが、村の課題は、漁業と酪農という2大基幹産業を有しながらも『じわじわと進む人口減少』や『雇用先の不足による移住決断への足踏み』、『進学により村を離れる若者が村に戻ってくる割合が非常に低い』など、様々な課題が挙げられます。
そういった課題解決に向けて進められたものが「新産業創造プロジェクト」です。
■「イチゴ」や「葉物野菜」の選定まで・・・
このような課題をどう解決できるのか、以下に焦点を当てて検討が進められました。
【産業活性によるまちづくりの活性化】
・既存産業の活性と新産業創出をIoT推進の観点から見出す
・第3の産業創出に向けた施設園芸栽培を検討
【既存にない産業の確立】
・冷涼な気候に合わせた省エネルギーによる農業を実証
・年間を通じた需要の高い「稼ぐ力のある」作物の栽培
IoTの活用で、今までは経験やノウハウがないと難しかったものが、作業の自動化やデータの蓄積などから初心者でも農業参入を行うことを可能にしたいと考えています。また、施設園芸いわゆる「ビニールハウス」を使用することで天候に左右されずに作物栽培が可能となり、さらに村の冷涼な気候を活かした作物選定も可能となります。
こうした検討・協議が重ねられた結果・・・
『イチゴ🍓』と『葉物野菜🥬』の栽培
を行うこととなりました。
(2)実際にイチゴ栽培を行ってみて・・・
栽培するイチゴには、どのような種類があるのか、広報誌でも紹介していますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。
「広報さるふつ」令和3年4月号
🍓 どうやってイチゴを育てているの??
村のイチゴ栽培は「高設栽培」を採用しており、ベンチの上にプランターを設置、作業の効率化を図っています。
■イチゴ苗🍓の定植
苗の定植は、今年3月中旬頃に2,000株ほどの苗を定植しました。
栽培には『培地』と呼ばれる人工培養土というものを使用しています。培土の到着後、苗の定植までに「500」個程あるプランターに入れた培土全てに水を入れ膨らませる作業が必要です。
方法は専門家に教わっていたものの、いざ開始すると『丸3日』。
ひたすら水を含ませる作業を行いました・・・。
初めて見る培土に戸惑いはありつつも、何とか苗の定植までには作業が完了、無事に苗の定植を終えることができました。
■苗の生育とミツバチ🐝の導入
苗の定植後には、イチゴの結実に向けた本格的な苗の生育に移りました。
まずは苗を大きく元気に育てるため、出蕾したものは摘花し、脇芽を適正な数に揃えるなどの作業に加え、害虫や病気の観察を行い計画的な薬剤散布を実施します。また、村で行う栽培調査研究の目的である【栽培マニュアル】作成のため、日々、苗の状況に関しても調査しています。
【苗の調査とは??】
①生育調査
「葉丈」や「芽数」、「開花日」や「花数」を記録
②収穫調査
イチゴの「重量」や「糖度」、「商品率」を記録
一部の品種では、苗の病気が発生するなど生育に偏りが見られるものもありましたが、概ね順調に苗の生育作業を進めることができ、いよいよ出蕾したものを残し、開花を待つ段階となります。
しかし、ここで問題となったのが「ミツバチの導入」です。これをクリアしなければ約2,000株のイチゴ全てを人工授粉することに・・・。それだけは何としてでも避けなければなりません。
しかし、猿払村がミツバチを購入すること自体、過去実績の無いことで
「購入できるミツバチの種類は?」
「どのように購入する?」
「どうやって飼育する?」
様々な障壁が・・・。また、当初道外の業者より購入を予定していましたが、道内への移入には検査が必要となるという問題も発生し購入を断念。
そこで、北海道養蜂協会に連絡し、道内において受粉用ミツバチを購入することができるか相談しました。
道北エリア(上川近郊)でレンタルできる養蜂家さんがいると連絡が!ようやく「受粉用のミツバチ」をハウス内に設置することができました。
その後、ハウス内ではイチゴの花へ訪花するミツバチの姿も見られ、一安心。4月より「ミツバチの導入」に追われていた私にとっては、この時のことを思い返すと本当に安堵した気持ちでいっぱいでした。
■収穫🍓の開始
さて、ここからいよいよ『収穫最盛期』突入!
イチゴ栽培を始め3ヶ月が経過した頃、受粉を終えたイチゴには色付きが見え始め、品種毎特徴のある香りがハウス内いっぱいに広がっていました。
いよいよ「さるふつ産イチゴ」の収穫が始まります。
イチゴの収穫開始を思い返すと、自分たちの手で大事に育ててきたイチゴが収穫できるという喜びと『さるふつ産イチゴ』誕生の嬉しさでいっぱいだったのを思い出します。
しかし、その気持ちとは裏腹に、急に訪れた『収穫最盛期』
私や協力隊員全員が「収穫が始まれば忙しくなる」と覚悟はしていたつもりでしたが・・・。
その覚悟を遥かに上回る収穫の多忙さを思い知らされました。収穫が始まったと同時に今まで行ってきた全ての作業は一時停止。収穫に専念するほか無いほどに『収穫』ができる。これ自体は、非常に嬉しい悲鳴ではあるのですが、少し辛かったですね(笑)
8月に入ると収穫作業も少し落ち着き始めたのですが、理由はイチゴの「成り疲れ」です。イチゴの実が以前より小さくなり、今までのような大きなイチゴの姿が無くりました。
これは、今年の猿払村は異常なまでに猛暑が続いたことも関係していると考えられますが、一気に迎えた収穫作業の多忙さに人手が足りなかったこともあって、生育作業の不足に反省点を残す結果となりました。
それでも、猿払村も涼しく・・・?いや、寒くなってきた9月下旬、「成り疲れ」だったイチゴも回復、少しずつ大きな実ができるようになりました。
そして、いよいよ今シーズン最後の月となる11月。この1ヶ月は本当にあっという間でした。村も本格的な冬に突入し一気に気温も低下、イチゴの色付きも非常に遅くなってきており、収穫量自体も劇的に減少することに。ハウス内には暖房機がありますが、収益性を見出すためにもあくまで『無加温』による栽培を継続しました。
■イチゴ🍓の販売
収穫された『さるふつ産イチゴ』は、村内での消費者調査を行うため地元スーパーで販売を開始。
販売を開始した6月は非常に好調で、消費者からも高い評価をいただくことができましたが、8月中の「成り疲れ」発生により、イチゴの実が小さくなったことからも「小さなイチゴを以前と同金額で販売するのか?」など、ご意見をいただく場面もありました。
村にとっても初の『さるふつ産イチゴ』販売なので、消費者からの声は非常に有り難いことです。
「時期によっては、価格の見直しが必要?」
「そもそも、販売ができない?」
今回の調査では、時期による価格改定は行わず販売を継続しましたが、こういった消費者からの声を拾い、次年度に向けて検討していきます。
また、今年度は生食イチゴの販売だけでなく「イチゴを使ったスイーツ」などの販売も行うことができました。
①Mon cher 「堂島ロール×猿払産いちごコラボロールケーキ」
②笠井旅館 女将手作り「イチゴジャム」
(3)イチゴ栽培における成果と課題は??
■どのような成果があったか
(1)生育
・栽培初年度ではあったが、良好な苗の生育管理
・無加温による生育
(2)収穫
・全国平均と比較しても引けを取らない『収量』
・人手の不足解消のため「おてつたび」や「パート雇用」を実施
(3)販売
・当初見込んでいた売上額を超える販売実績
・スイーツでの猿払産イチゴの活用を見出す
(4)猿払産イチゴの提供
・保育所の給食提供
・各団体活動へのイチゴ提供
・保育園児や小学校児童の収穫体験
葉物野菜同様、まずは「無加温」での栽培実証成功というのは、低コストでの栽培の可能性を広げてくれます。
収量は、当初目標であった『1t』という数字にはわずかに届きませんでしたが、全国平均を上回る品種もあり、初年度の実績としては良いスタートを切ることができました。
販売は、当初見込んでいた売上額を8月時点で超え、消費者からも猿払産イチゴの「味」や「品質」に高い評価をいただきました。また、猿払産イチゴを使用したスイーツも、「堂島ロール」とのコラボが実現し、初年度としては非常に話題性のある年となったと実感しています。
イチゴの名前を応募してくれた人、イチゴの名前総選挙に参加してくれた小中学生、パートやおてつたびで栽培に関わっていただいた皆様など、幅広い世代に関わってもらうことで、村だけでなく本事業の「当事者」と言える人が増えて生きている実感があります。
■次年度に向けた課題は?
一定の成果を得られた一方で課題も多く残りました。
〈どのような課題が??〉
(1)苗の状況
・一部苗は、定植直後より病気発生が相次ぎ生育が遅れる
(2)生育状況
・全体的な害虫発生、一部苗への病気発生
(3)収量
・一部苗の生育の遅れから、全体的な収量減
(4)販売
・村近郊での販売における輸送課題
(5)加工品率の割合
・病害虫の発生等も起因し、加工品向けイチゴの割合が高い
これら課題解決に向け、次年度までの期間で検討が必要となってきます。
苗の状況に関しては、次年度同じ病気の発生に備え、品種別に灌水量の調整を行える苗配置を考慮することが必要です。
また、病害虫の発生には非常に苦しめられました。一度発生し始めた害虫や病気を防除しますが再度発生、それによりイチゴの実の品質低下に繋がったことから、加工品となるイチゴの割合が高い状況となってしまいました。そのため、今期の生育管理に関しては、非常に多くの課題を残す年となってしまいました。
収量については一定程度成果があったと感じる反面、一部品種での収量の減少も見られました。特に当初より苗の状況が思わしくないものの収量は極端に低く、次年度は生育管理を徹底し、収量の増加を目指したいと考えています。
イチゴの販売に関しては、村外へ販売を行う際には「輸送」が必須となります。村近郊と言えどやはり輸送時間は長く、また輸送中の品質維持という点でもまだまだ課題が山積みです。
他の課題同様、次年度までの期間の中でいかに、
「さるふつ産イチゴ」を多くの人の手に取ってもらえるか
この点を重点的に考える必要がありそうです。
(4)最後に・・・
今年3月より開始した「イチゴ栽培」ですが、振り返ってみると11月のシーズン終了までには、本当に様々な出来事があったなと感慨深いものがあります。しかし、もちろんこれで終了ではありません。先ほど挙げたような課題を解決する策を考え、次年度の成果を少しでも向上させたいと考えています。
また、「前編」でお伝えした葉物野菜同様、栽培初年度にこれら成果を残すことができたのは、ご協力・ご支援くださる皆様のおかげです。当事業に関わっていただいた皆様に感謝いたします。
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ここまで読んで下さった皆様へ、先週から2週に渡ってお届けしてきた
「イチゴ、葉物野菜栽培の1年間を振り返る(前・後編)」
最後までご覧いただき、本当にありがとうございました。
現在は、2期目の「葉物野菜🥬」へ挑戦中です!
また、次の「イチゴ栽培🍓」の開始は、来年3月からとなります。
今後も私の記事で「施設園芸栽培」の進捗状況などを投稿していきますので、ぜひご覧いただける嬉しいです!
それでは、また次の記事でお会いしましょう。