猿払村の厳冬を乗り越えられるか!?野菜栽培の可能性を探る男たち
みなさんこんにちは
企画政策課の”しょうた”です。
本日のnoteは『新規産業の創出事業編』第6弾です
現在、「農業」を新たな産業とするために取り組んでいる「施設園芸栽培調査研究事業」ですが、村では「イチゴ」のほかに「葉物野菜」の栽培も行っています。
今回は、昨年開始した野菜の栽培について、猿払村の厳冬期を乗り越えられる野菜の可能性を探るために取り組んできたことを綴ります。
🤲 「新規産業の創出事業編」バックナンバー 🤲
さて今回の内容は4つ。
(1)厳冬期を乗り越える葉物野菜の可能性
2020年10月1日より開始した「猿払村施設園芸栽培調査研究事業」早くも1年が経過しました。
この事業は、昨年の秋冬にかけての「葉物野菜の栽培」から始まり、以降春からの「イチゴの栽培」へと移っていきます。
野菜栽培に挑戦『厳冬を乗り越える野菜の可能性』を探る
まずは「真冬の猿払村」を包み隠さずお伝えしたい。
日本最北の村ともあり、村の冬は寒いです
「最低気温は-20℃」
オホーツク海より吹き付ける風の強さは異常です
「最大風速は20m/s」
風が強いがゆえに、月に数日は絶対に吹雪きます
「ホワイトアウト、外出はできません」
伝わりましたでしょうか。
そう、これからの時期は猿払村に厳冬期が訪れます。
そのような寒い中、いくらビニールハウスといえ、野菜栽培は可能なのか?
暖房の使用で解決できるのでは??
仮に毎日ハウス暖房を稼働させた場合、最低でも「1万円/日」程の暖房コストが発生します。
これでは、農業経営を考えた時に現実的とは・・・。
やはり、『真冬の猿払村での栽培、かつ無加温による栽培』ということが、今後の施設園芸栽培の可能性を見出す大きな要因となりそうです。
だからこそ
猿払村の厳冬期を乗り越え、美味しく元気に育つ野菜が必要
そこで、主に「水稲や畑作物、園芸作物など」を調査研究・技術普及から地域課題の解決に向け日々取り組まれている北海道立総合研究機構農業本部(道総研)上川農業試験場へご相談しました。
①『猿払村のような厳冬期』に栽培可能な野菜はある?
②ビニールハウスとは言え『無加温』での栽培はできる?
答えはどちらも
『Yes』
上川農業試験場ではビニールハウスを使用し、真冬の北海道での無加温で育てられる「葉根菜類」の栽培調査を行なっており、まさに猿払村が求める施設園芸栽培の形がそこにありました。
善は急げ。
早速、上川農業試験場へ実際に行われる栽培施設の見学や栽培に必要な知識等を教わりに行きました。
(2)猿払村で栽培を行う野菜を選ぶ
上川農業試験場へ伺い「冬に栽培できる野菜」に関して勉強させていただきました。
■現地では、どのようなことを学んだのか?
①耕運機の操作方法
②播種の方法
③冬に栽培される野菜とは
④施設の見学「ハウスの管理方法」「栽培野菜」
実際に野菜栽培が行われる施設を視察し、こちらの栽培に向けた準備も完了、「真冬の猿払村」を乗り越えられる野菜を選ぶため、3つのポイントに絞り考えていきます。
【野菜を選ぶ3つのポイント】
1)真冬でも栽培が可能なこと
厳冬な猿払村を乗り越えられる必要がある
2)無加温で栽培が可能なこと
加温コストをかけることなく、省エネで栽培ができる
3)消費者が手に取りやすく、栄養価が高いこと
家庭料理にも使用しやすい野菜+栄養価が高い
野菜の選定には、上川農業試験場の方々にもご指導いただきながら、猿払村で実際に栽培を行う野菜を選びました。
また、現在取り組みを進める施設園芸栽培を産業化とする可能性を探り、最大限の収益を実証するため、野菜栽培を行います。(※一部品種は、9月中に播種を行い、定植までの期間で定植が可能なまで苗を育てます。)
【葉物野菜 6種】2020年10月6日 定植
①リーフレタス(緑) 808株
②リーフレタス(赤) 665株
②チンゲン菜 812株
③ミニ白菜 371株
④こまつ菜 1920株
⑤ほうれん草 1280株
これら6つの野菜を定植し、いよいよ猿払村で野菜栽培の実証が開始しました。
(3)いよいよ「真冬の猿払村」で栽培開始
さて、猿払村での定植を終えた野菜ですが、定植当初とても小さかった苗が日に日に成長。1ヶ月を経過した頃には、すでに収穫ができそうなくらいにまで成長しました。
大きく成長した野菜は、いよいよ本格的な猿払村の「真冬」を経験することとなります。
私たちも栽培開始から初めての冬ということもあり、
「ハウスの中がどの程度まで温度が下がるのか?」
「氷点下になっても野菜は育つのか?」
「ハウスに雪はどの程度積もるのか?」
不安な材料が多数・・・。そういった不安を事前に解消するために上川農業試験場への視察を行ったはずなのですが・・・。(笑)何事も「初めて」というのは、心配事が多くなってしまいがちですね。
しかし、私たちの不安はよそに、日を追うごとに6つの野菜は一層成長。定植当初のあの小さな苗だった面影は一切ありません。今や「スーパーの陳列棚に並んでいる野菜」と遜色が無いまでに成長してくれました。
(4)収穫の開始〜来年度栽培に向けて
猿払村も12月に入り、いよいよ栽培する各種野菜にも収穫時期が訪れました。職員の手で一つ一つ丁寧に収穫される野菜はコンテナに積まれ、今日も出荷・納品を行います。
猿払村で収穫される野菜はどのように販売・使用されるのでしょうか?
【収穫された野菜はどこへ?】
・地元スーパーでの販売
・保育所や小中学校の給食、老人ホームの食事食材として提供
※保育園児による収穫体験も実施しました
さて、野菜も無事に収穫が開始されホッと一息。しかし、猿払村施設園芸栽培における「野菜栽培」ですが、無事に収穫を迎えるまでには、栽培に伴う様々な苦労や苦悩、課題も多くありました。
【栽培の苦労・苦悩】
・冬の朝は寒さで野菜が凍る
寒さで野菜が凍るため、霜が溶けるまで収穫できない
・収穫〜袋詰め、出荷までの行程
霜が溶け、ようやく昼頃から収穫開始します
ようやく袋詰めを終えた頃には当たりは真っ暗
・ハウスに積もる雪
ハウスの周辺や屋根に積もる雪が日光を遮って
しまうため、日中でもハウス内は氷点下に。
【野菜の生育課題】
・水を多くやり過ぎてしまった
一部の苗が水分過多となり腐ってしまった
・不織布を掛ける時期が遅かった
生育温度に達せず、生育の遅れが出てしまった
・苗同士の定植位置が近接してしまった
生育に遅れが出る苗が発生してしまった
このように、様々な苦悩や課題があったものの、野菜栽培全体を通してみると概ね順調に野菜を育てることができました。こうした経験も初年度の栽培として教訓となり、次の野菜栽培に向けた良い課題となります。
こうした課題などもあり、猿払村での施設園芸栽培が始まりましたが、結果として、「猿払村の厳冬期」においても、良質で高栄養価の野菜を栽培することができるという実証結果を生むことができました。
葉物野菜の栽培が終了する2月。野菜の栽培はここで一時休息し、次は春〜秋にかけての「イチゴ栽培」の出番です。
まずは、3月の「イチゴ」定植に向けて、準備を着々と進めていきたいと思います。
さて今回は、猿払村が行う「野菜栽培」についてご紹介させていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。