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認知症を理解し、考える
この記事は広報猿払12月号(2024年12月12日発行)の特集を転載したものです。
認知症とは?
もの忘れが原因で、日常生活を送ることに支障が出ている状態を「認知症」といいます。
認知症〇×クイズ
認知症には、脳細胞が壊れることによって起こる中核症状と呼ばれる症状があります。
○×形式でその種類を見ていきましょう。
Q 昨日の夕食のメニューを思い出せない。
A 正解は×。
これは「加齢によるもの忘れ」であり、認知症ではありません。中核症状の一つである記憶障害は、体験したことの全てを忘れてしまうため、食事をしたこと自体を忘れてしまいます。
Q 自分の家へ帰る道がわからない。
A 正解は〇。
これは見当識障害と呼ばれる中核症状の一つで、今の時間や場所がわからなくなってしまいます。
Q 「暖かい格好をしてね」と言われてもわからず、Tシャツを着てしまう。
A 正解は〇。
これは理解・判断力障害と呼ばれ、複雑な物事を理解したり、判断することに時間がかかるなどの支障がでます。
Q 献立に必要な食材を間違えてしまう
A 正解は×。
中核症状の一つである実行機能障害は、計画を立てたり、段取りをすることが難しくなるため、冷蔵庫が大量の卵であふれているなどの支障がでます。
check!
昨日の夕食が思い出せなくても「思い出そうとすること」が大切です。
認知症の原因となる病気
アルツハイマー型認知症
【特徴】認知症の中で最も多くを占め初期からもの忘れがみられる
【原因】脳にごみが溜まることで、次第に脳の神経細胞が変化したり死んでいってしまう
レビー小体型認知症
【特徴】幻覚(特に幻視)が特徴的
【原因】脳にごみが溜まることで、次第に脳の神経細胞が変化したり死んでいってしまう
前頭側頭型認知症
【特徴】記憶障害よりも行動の変化や言語障害などが目立つ
【原因】脳にごみが溜まることで、次第に脳の神経細胞が変化したり死んでいってしまう
脳血管性認知症
【特徴】認知機能が低下する。生じる症状はさまざま。
【原因】脳梗塞や脳出血などにより脳の血管が損傷し、脳に栄養や酸素が行き渡らなくなる
認知症を予防しよう
認知症の予防とは、「絶対に認知症にならない」というものではありません。ですが、正しい予防方法を知り、日頃から意識して生活することで、認知症発症のリスクを軽減したり、進行を緩やかにすることができます。
薬や食事では予防できない
認知症の薬というのは、症状の進行を約1~2年ほど遅らせる薬のため、予防の効果はありません。また、「これを食べれば認知症を予防できる!」といった情報に根拠はなく、特定の食事で予防することはできません。
脳梗塞・脳出血は予防できる
脳血管性認知症の原因となる脳梗塞・脳出血は、高血圧・糖尿病・コレステロールの薬を飲むことによって予防することができます。また、これらの生活習慣病を防ぐためには、近所を散歩をする、上半身を動かすなどの軽い運動も効果的です。
脳を活性化させる
頭を使い、脳を活性化させることは認知症の予防につながります。自分の趣味を持っている人はそれを続けたり、この機会に脳トレやクロスワードを始めてみるのもよいでしょう。皿洗いや洗濯などの家事も頭を使うため、家庭内で役割を持つことも効果的です。
人との交流が効果的
認知症を予防するためには、様々な人と関わることが大切です。認知症の進行具合は人それぞれですが、はやい人だと3か月で進行してしまう人もいます。通院やリハビリに行くだけでなく、自治会の集まりに顔を出したり、親戚や家族と過ごすことが大切です。
check!
嫌がる本人への無理強いは、ストレスや自信喪失に繋がってしまいます。
治る認知症とは
甲状腺機能低下症や慢性硬膜下血腫、ビタミン欠乏症など、ほかの病気や薬の影響で認知症とよく似た症状や、認知症の状態を引き起こす体の病気はたくさんあります。これらは、治療によって改善できる可能性があります。
このような、「治る認知症」「認知症もどき」はたくさんあるため、自分や身近な人が「認知症かもしれない」と思ったら、焦らず、まずは内科へ受診してください。そこで、他の病気が原因ではないことを確認してから、認知症専門の医療機関へかかりましょう。
行動・心理症状
行動・心理症状(BPSD)とは、もの忘れをはじめとした中核症状から派生して起こる、行動や心理的な部分に生じる症状の
ことです。幻覚や妄想、抑うつ、作り話、徘徊、暴言・暴力などの症状がみられます。
本人の元々の性格や持っている能力、周囲の環境や精神状態が影響し、多くは日常生活に支障を与えます。
BPSDが起こる例
1. 見当識障害によって、今いる場所がわからなくなり、家に帰れなくなる
2. 「家に帰らなきゃ!」と思い歩き回る
3. いわゆる徘徊をしてしまう
認知症の人への対応
失敗が続き、否定されるとBPSDは悪化します。否定せずに、まずは受け入れることが大切です。BPSDを予防し、悪化させないためには、本人がポジティブな気持ちでいられることが大切です。そのため、周囲の理解や対応の工夫が重要となってきます。
自尊心を傷つけない
突き放した態度をとらない、叱らない、脅さないなどを心がけ、相手の自尊心を傷つけないようにしましょう。
また、「だめ」といった強い否定や注意も避けましょう。
相手の感情を大切にする
嬉しい・楽しいなどのポジティブな感情は余韻を残してくれますが、怒り・哀しみなどのネガティブな感情は尾を引きます。積極的に、できたことやしてくれたことに感謝を伝えましょう。
わかる言葉で簡単に伝える
早口にならないように気を付けながら、単純な内容で順番に、一つずつ伝えましょう。また、本人が覚えていなくても、興味を持ってくれるような話題で会話をするのがよいでしょう。
話をしっかり聞く
ありえないことでも否定せず、自慢話は真剣に聞きましょう。混乱している時にこちらから話しかけてしまうと、余計に混乱してしまうため、助言などはせず、そっとしておきましょう。
ゆっくりと繰り返す
名前や日時、場所をゆっくり伝えたり、時計やカレンダーを設置しましょう。
check!
「さっき言ったでしょ!」「どうして忘れるの!」などは絶対に言わない。
認知症になっても安心して暮らせる猿払村を目指して
自分ごととしてとらえる
認知症は特別な人がなるものではなく、誰もがなり得るもので、「若年性認知症」と呼ばれる、65歳未満でも発症する可能性のある認知症も存在します。日ごろからの予防は大切ですが、もしも認知症になったとき、家族や近所、職場、友人などの正しい理解と協力があれば、住みなれた猿払村で安心して暮らすことができます。また、近年では進行を遅らせる薬も承認されており、早期発見・早期治療ができればより安心です。
猿払村の取り組み
認知症を自分ごととしてとらえる次のステップとして、もっと詳しく知りたい、予防したい、自分が認知症になった時に安心して暮らしたい。そんな人たちのために、猿払村では様々な取り組みを行っています。
認知症サポーター講座の開催
地域包括支援センターでは、センターにいるキャラバンメイト(認知症サポーター養成講座を開催するために必要な研修を受講している人)が講師となり、これまでに一般住民はもちろん、稚内信用金庫や郵便局の職員のみなさん、小・中学生のみなさん、各地域のふれあいサロンに参加しているみなさんに対して開催してきました。
最近では、役場の新規職員を対象に開催しています。認知症サポーターは、認知症を正しく理解し、認知症に対する誤解や偏見をなくし、認知症の人や家族を応援してくれる心強い味方です。
猿払村には、延べ404人の認知症サポーターがいます。認知症サポーター養成講座は、企業や自治会などからの要請があれば、土日や夜間に関係なく開催可能ですので、遠慮なく地域包括支援センターまでご連絡ください。
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認知症予防のために
認知症を予防するためには、人とおしゃべりして楽しい時間を過ごすことも有効です。
地域包括支援センターでは、介護予防として毎週木曜日の午後から「グループリハビリ教室」を開催しています。体を動かし、さまざまなゲームなどをすることで楽しく、認知症も予防できる時間となっています。
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研修会で理解を深める
村の多くのみなさんに認知症を正しく理解してもらうための研修会を開催しています。
令和5年6月には、北海道認知症の人を支える家族の会と共催し、「認知症の人と共に暮らすまちづくり研修会」を開催しました。
最近では、10月に村国保病院の佐藤院長の講演とエーザイ株式会社の協力による“脳年齢チェック”などを行う「認知症勉強会」を開催しました。
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認知症初期集中支援チームの設置
認知症の症状がみられるが、病院に繋がっていない人や一人暮らしの人などを支援するために、村では認知症初期集中支援チームを設置しています。認知症初期集中支援チームとは、認知症初期から家庭訪問を行い、症状を把握しながら家族への支援などを行うチームです。チームは、村国保病院の院長や看護師、保健福祉課の保健師、地域包括支援センターの社会福祉士で構成されています。
「あれ?」と思ったら、相談窓口へ
今や65歳以上の5人に1人が認知症となる時代です。知名度は上がってきていますが、実際に自分や家族、身近な人が認知症になってしまった時の具体的な対応についてはわからない方が多くいらっしゃいます。地域包括支援センターやかかりつけ医は「あれ?」と思った段階から相談することができる窓口です。早く対応することで進行を遅らせることができますし、もし認知症になったとしても周囲の人が知識を持って関わることができれば、自分らしい生活を続けることができます。
猿払村地域包括支援センターでは、今後も認知症について知ってもらう機会を作っていきます。村民の皆さんも「こんなこと相談していいのかな」と思う段階から、ぜひ気軽にご相談ください。