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\決め手は価格だけじゃない/地方公務員の私がこれまでの経験で学んできたこと

こんにちは。猿払村企画政策課の新家です。

いつも猿払村公式noteをご覧いただき、ありがとうございます。私は、毎月5週目の記事を担当しています。

年内のカレンダーを見ると6月、9月、12月が第5水曜日まであるので、年内のノルマは3回です。どうぞよろしくお願いします。

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前回の記事は5月26日の投稿で、このアカウントの記念すべき初投稿。“北海道猿払村がnote で実現したい4つのこと”というタイトルで投稿しました。

想像していた以上の反響をいただき、「noteをスタートさせてよかった」とホッとしたところです。

さて、今日は日々の業務から感じていることシリーズとして。自治体が業務発注する際の事業者の決定方法について、これまでの経験で、私が学んできたことについて書いてみます。

事業者の決定はどんな方法で?

自治体が事業者へ業務等を発注するには、入札プロポーザルといった手法があります。

簡潔に言うと、入札は価格で、プロポーザルは提案を視点に選ぶことになります。

入札は、工事や物品購入など規格や内容を明確にできるもの。結果に差が出ないので、一定の条件を満たすことを前提に価格で選びます。

一方でプロポーザルはデザイン、イベント企画、プロモーションなどの業務で採用されます。答えが一つではなく、最も業務の目的に適した内容を導くために提案内容を審査して選びます。

私のターニングポイント

入庁4年目、平成13年度が私にとって仕事への向き合い方のターニングポイントを迎えました

村勢要覧という村の概要を紹介する冊子の制作を担当することに。その事業、過去は入札によって価格の一番低いところと契約を結んできました。

冊子を最高なものに仕上げたいという思いから、上司へ事業者の決定方法を変更してみたいという提案をしました。

当時はコンペと言う言い方をしていましたが、一定の条件のもと企画提案を受け、審査し、最も優れた企画提案をした事業者を契約予定事業者と決定するというものです。

当時、猿払村では事例がなく他の自治体の職員が手がけた事例を教えてもらい、事務手続きの内容や流れを決定していきました。

広く応募を受け付つけるのではなく、村の入札参加資格を保有するデザイン・印刷に関連する事業者へコンペ実施の案内を通知。参加意思のある事業者には企画・デザイン案を提出してもらいました。

通知では、ページ数、必須項目、写真についての指示のほか、予算上限額を提示。

最終的に4社が参加し、提出いただいた企画・デザイン案は10名程度の審査員に評価いただき、最も評価の高かった事業者と契約することに。

契約後は1年かけて事業者が写真を撮影したり、村民を取材するなどして納得できる冊子を作り上げることができました。

この取組みから、金額での事業者決定方法に加えて、企画提案を受けて事業者を決定するプロセスに手ごたえを感じました。また、必ずしも金額だけで契約の相手方を決定しなくても良い場合があると考えました。

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広報紙、毎月発行へ変化

平成14年度には広報紙を作成するシステムの導入を担当することに。

当時、広報紙は年に6回、隔月の頻度で発行していました。担当となった当初は、なぜ毎月じゃないんだろうと疑問に思っていました。

平成12年に広報紙作成の主担当となったときに、北海道内全自治体を対象に開かれた広報に関する研修会に参加。その時に、おおよその自治体が毎月広報誌を発行していることを知ります。

広報紙を発行する目的を考えたときに、ふた月に1回より毎月発行した方がより新鮮な情報をお届けできるうえ、内容を充実できると考えました。

研修から戻った私は、情報伝達のスピードや質を高めたいと考え、毎月発行に向けての課題を洗い出すことに。

まず、はじめの壁はコストの問題です。単純に年6回の発行を、同様のページ数で12回発行とすると2倍の経費がかかることになります。

この点を解消したいと考えました。そこで、研修の際に知ったDTPという職員が自らパソコン上でデザインを完成させるシステムに注目しました。

それまでは、原稿や写真を用意して、デザインを印刷会社に委託していたので、その部分の経費を節約できることに。

この改善によって、ページあたりの単価を半額以下に抑えることができ、印刷費だけで言うと、年6回の時と変わらないコストで毎月発行することが可能となったわけです。

次に職員の労力の増大という問題。業者に任せていたことを職員がやるので当然負担が増えます。また、ワード・エクセルといった一般的なソフトではないシステムを利用していたので、人事異動によって次の担当者への引き継ぎが難しいことなどがあります。

一方で、コスト以外にもメリットを見出すことができました。職員自らがデザインを作成することで、印刷データの提出締め切りを大きく後ろ倒しすることが可能となったのです。

タイムリーな情報を発信するためには、この点は大きなメリットです。

かくして、メリットとデメリットを総合的に検証し、システムの導入と毎月発行することを決定

この時も、システムを金額だけで判断するのではなく、対応可能な事業者から提案をいただいて、イニシャルコスト、ランニングコスト、使い勝手、その後の汎用性などを評価して、導入し契約する手法をとりました。

その時導入したシステムは、私が2回目の広報担当になった時も利用し続けていて15年ほど利用することとなりました。

結果論ではありますが、長期にわたって利用できるシステムを導入することができました。

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​過去イチの大事業を担当して

平成18年から8年間は総務課に所属。情報システムの管理、庁舎内外のパソコンやサーバーの保守管理を主に担当しました。

この8年間で感慨深かったのは10億円を超える事業に担当者として関わった事です。村内全域に光ケーブルを敷設して、全地域でインターネットブロードバンド化と地上デジタル放送の視聴が困難だった地域の解消を図りました。この時も広く公募しプロポーザル方式で参加事業者を募りました。

テレビの視聴状況が良くなかったり、通信回線の状況があまり良いとは言えない環境の猿払村だったので、多くの村民から感謝の声をかけていただき、とてもやりがいのある仕事でした。

情報通信基盤整備事業

現在の部署に異動してから

平成26年には機構改革で新しく設置された企画政策課という部署に配属されることに。企画係長として4年、課長補佐として4年目を迎え、現在8年目となります。

担当する仕事内容から、計画策定、イベント実施事業支援、デザイン制作などの業務も多く、これまで以上にプロポーザルを活用する機会が増えていきました。

平成26年度 第7次猿払村総合計画策定支援業務
平成28年度 猿払村勢要覧制作業務
平成28年度〜移住体験ツアー業務
平成30年度 IoT推進構想策定業務

猿払村勢要覧の復活

なかでも、平成28年度に制作した村勢要覧は感慨深い仕事となりました。

村勢要覧は、平成13年度に私が担当して制作して以来、財政難などの理由によって更新が凍結されていました。

15年の時を経て、改めて村勢要覧の存在意義を見つめ直し、必要性を改めて確認。制作に向けて予算要求しました。職場内部の理解を得ることができ、財政的な困難も乗り越えつつあったことから予算がついに15年ぶりに復活。

せっかく獲得した予算を有効に活用して、広く多様な事業者が参加できるよう、公募型プロポーザルを実施。5社からの企画提案を受けて、11人の審査員にて審査を行なって、最も評価の高かった事業者と契約。

6月から3月にかけて、村内をくまなく取材していただき共に自信を持って、世に提供できる作品を作り上げることができました。

各所から大きな反応をいただき、嬉しい限りです。制作から5年を経過しますが、今年度は異例となる2度目の増刷を行い、まだまだ現役で使用しています。

次の制作も数年後に始まる予定。前回作品に負けない、冊子を制作をすべく今からワクワクしています。

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大調査を行なって・・・

平成26年度から平成27年度にかけては、2年にわたって第7次猿払村総合計画の策定作業を実施。この業務を担う事業者の決定には、北海道すべての自治体を巻き込みました。

総合計画とは。地方自治体が策定する自治体のすべての計画の基本となる、行政運営の総合的な指針となる計画です。

総合計画の策定にあたっては、事業者さんの知見を借りて策定すること多いです。これまでは、村の入札参加資格を保有する事業者のうち金額による入札で事業者を決定してきました。

第7次総合計画の策定にあたり、これまでの経験から金額ではなくプロポーザルにて策定支援を受ける事業者を決定したいと考えました。

また、村の名簿に登録のある事業者だけではなく、広く募ることに。どうしたら良いか考えて思いついたのが、北海道の全ての市町村を対象とした総合計画策定に関するアンケート調査を行うということ。

事業者の支援を受けないで策定している自治体もある認識していたので、事業者の発掘の他にも得られることがあると考えました。

項目としては業者委託の有無、委託業者名、計画期間などのシンプルな設問。

回答いただいた自治体には調査結果のフィードバックをさせていただきました。

私が知らないだけで他の自治体で実績がある事業者さんが複数存在したほか、自分の想定を遥かに超える計画期間を設定している自治体があるなど、新たな発見がいろいろとありました。

過去5年間に、3自治体以上の総合計画策定に関わりを持つ事業者へプロポーザル実施をご案内し、6社からの参加のもと審査を実施。

結果的に、当初私が知らなかったアンケートで知ることとなった事業者と契約し策定業務を進めることに。

このように、少し手間にはなるものの、“村が求める事業者を見つけ出す方法がある。”とこのときに学びました。

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まとめ

今日は、自治体の事業者への業務発注にまつわるお話、特にプロポーザルという方式を軸にご紹介してきました。業務内容によっては、オーソドックスに入札によって進めるのがベストな場合もありますし、企画提案を受けてより良い提案事業者と進めるのが望ましい場合もあると思います。

これまでもその時々で、効果が最大化するであろう方法を選択してきたつもりです。今後も、どのように事業者を決定していくべきなのかしっかりと考えて仕事を進めます。

結果的に、前回通りの内容で進めるということは良いと思います。要は、その時その時において、ベストと思われる手法を選択するために「動いたのか、考えのたか」という点を大切にしています。

我々の仕事は公金と呼ばれるお金を使って動きます。限られた予算で、効果を最大化するということを常に意識して、今後も仕事に向き合います。

長文を最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。